レンズ千夜一夜

2008 老木人(2018年1月29日キネタール38㎜F1.8ユニバーサルシティで怪人たちと格闘)


随分前のことです。
私は山辺の道が大好きで、よく通いました。
その中間にある長岳寺の参道に入ったあたりに、
切り通しのようになった場所がありました。

右手の高さ2m弱の土手の斜面が雨などに崩されたようで、
斜面が深くえぐれたようになっていて、
土手の上に立ち上がる松の根っこが露出していました。
参拝者が曲がりくねった根っこに絶えず触れてきたようで、
完全にツルツルに滑らかになってしまい、
まるでヴィーナスのような肢体が舞うような姿でした。
そして、ヴィーナスの足下に、黒々とした別の根っこが顔を出し、
まるでサチュルヌスが地中から浮かび上がるような姿でした。

行く度に撮ったのですが、丁度撮影し終わったとき、
年配のアマチュアカメラマンが三脚を抱えて来かかりました。
私、思わず呼び止めて、
「この根っこ、まるでヴィーナスのようではありませんか?」
余計なことを言ったものです。
その男性、じっと見つめた末に、一言、
「いや、見えませんね。根っこですね」
そして、さっさと立ち去ってしまいました。
この方にとって、根っこは根っこ、というわけでした。

今回は、JRユニバーサルシティ駅近く、線路沿いのマンションで、
付虹先生の揚琴レッスンを受けた後、
駅に向かうプロムナードで撮りました。
道沿いの緑の中に朽ち木が何カ所も設置されて、
往路と復路で、同じ朽ち木が違った顔を見せてくれたりして、
眼を楽しませてくれます。
いつも撮ります。

おそらく長岳寺で出会った風景写真家は、
私の写真を撮っても、一言、切って捨てるでしょうね、
「朽ち木ですね。
そんなもの撮って、なにになりますかねえ?」

今回はテーラーホブソンの映画用レンズ、
キネタール37.5mmF1.8で撮りました。
スピードパンクロの後継機種、弟分のようです。
兄貴のスピードパンクロよりも切れ味がよいようです。
人間でも、兄弟では、たいてい、弟の方が頭のキレがよいですね。
私は兄でした。

テーラーホブソン家の末っ子キネタール。
ソニーα7に付けました。
四隅が少しけられますが、中心部で勝負する人間です。
ちっとも気になりません。
今回も快刀乱麻的な描写を見せてくれました。
兄貴の魔術性がその分稀薄になっているのですが、
このあたりは時代の要請、映像芸術の路線の変化、
レンズの適材適所の役割分担にもつながるのでしょう。
それでも、私には十分メタモルフォーゼを見せてくれるレンズ、
そんな感じがして、大好きですね。
私にとっては、映画用レンズの魅力に眼を開いてくれた草分け。
今回も、存分に魅力を発揮してくれた感じがします。




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by Sha-Sindbad | 2018-08-29 17:31 | CookeCinema25/3.5 | Comments(0)