人気ブログランキング | 話題のタグを見る

レンズ千夜一夜

34 電線 (キノプラズマート25mmf1.5で空のボケを撮る)



34 電線  (キノプラズマート25mmf1.5で空のボケを撮る)_b0226423_11353778.jpg




芥川龍之介の「蜘蛛の糸」をはじめて読んだときのことを覚えています。

悪党のカンダタが、天国への糸を上っていったとき、
ふと気がつきますと、蜘蛛の糸の下の方に見えました、

    数かぎりもない罪人たちが、自分ののぼった後をつけて、
    まるで蟻の行列のように、
    やはり上へ上へ一心によじのぼって来るではございませんか。
    カンダタはこれを見ると、驚いたのと恐しいのとで、
    しばらくはただ、莫迦のように大きな口を開いたまま、眼ばかり動かして居りました。

結局、カンダタは、我慢ができなくなって、大声で「下りろ、下りろ」と怒鳴り、
その途端、蜘蛛の糸が切れて、元居た地獄に真っ逆さま。

    これを見ていたお釈迦様、
    悲しそうな御顔をなさりながら、またぶらぶら御歩きになり始めました。
    自分ばかり地獄からぬけ出そうとする、カンダタの無慈悲な心が、
    そうしてその心相当な罰をうけて、元の地獄へ落ちてしまったのが、
    御釈迦様の御目から見ると、浅間しく思召されたのでございましょう。

これって、少し、おかしいんじゃない?
私は子供心に思ったものでした。

カンダタがそんな人間であることは、今さらテストしなくても、
お釈迦様には分かっていたのです。
もっと言えば、これから起こることも分かっていたのです。

それじゃ、何のために、蜘蛛の糸を垂らしてあげたのでしょう?
結果が分かっていてテストをするのもおかしいことです。
カンダタの人間性を知れば、カンダタが、
「おーい、いいから上っておいで、どんどん上っておいで、
みんなで天国に上ろうね!
アハハハ、嬉しいねえ!」
なんて、言うわけがないじゃありませんか?

それなら、蜘蛛の糸ではなくて、がっしりとした梯子を下ろしてあげなさいよ。
誰だって、マザー・テレサさんだって、
蜘蛛の糸じゃもつはずがないと思うじゃありませんか?

それを今さら「浅ましく」思うなんて、ちょっとなあ.......?

安土でも、高い電線から、一本垂れ下がっていました。
これ位太かったら、カンダタも叫ばなかったかな?
むりでしょうねえ。
by Sha-sindbad | 2011-07-17 11:56 | Kinoplasmat25/1.5a | Comments(0)