34 電線 (キノプラズマート25mmf1.5で空のボケを撮る)
芥川龍之介の「蜘蛛の糸」をはじめて読んだときのことを覚えています。
悪党のカンダタが、天国への糸を上っていったとき、
ふと気がつきますと、蜘蛛の糸の下の方に見えました、
数かぎりもない罪人たちが、自分ののぼった後をつけて、
まるで蟻の行列のように、
やはり上へ上へ一心によじのぼって来るではございませんか。
カンダタはこれを見ると、驚いたのと恐しいのとで、
しばらくはただ、莫迦のように大きな口を開いたまま、眼ばかり動かして居りました。
結局、カンダタは、我慢ができなくなって、大声で「下りろ、下りろ」と怒鳴り、
その途端、蜘蛛の糸が切れて、元居た地獄に真っ逆さま。
これを見ていたお釈迦様、
悲しそうな御顔をなさりながら、またぶらぶら御歩きになり始めました。
自分ばかり地獄からぬけ出そうとする、カンダタの無慈悲な心が、
そうしてその心相当な罰をうけて、元の地獄へ落ちてしまったのが、
御釈迦様の御目から見ると、浅間しく思召されたのでございましょう。
これって、少し、おかしいんじゃない?
私は子供心に思ったものでした。
カンダタがそんな人間であることは、今さらテストしなくても、
お釈迦様には分かっていたのです。
もっと言えば、これから起こることも分かっていたのです。
それじゃ、何のために、蜘蛛の糸を垂らしてあげたのでしょう?
結果が分かっていてテストをするのもおかしいことです。
カンダタの人間性を知れば、カンダタが、
「おーい、いいから上っておいで、どんどん上っておいで、
みんなで天国に上ろうね!
アハハハ、嬉しいねえ!」
なんて、言うわけがないじゃありませんか?
それなら、蜘蛛の糸ではなくて、がっしりとした梯子を下ろしてあげなさいよ。
誰だって、マザー・テレサさんだって、
蜘蛛の糸じゃもつはずがないと思うじゃありませんか?
それを今さら「浅ましく」思うなんて、ちょっとなあ.......?
安土でも、高い電線から、一本垂れ下がっていました。
これ位太かったら、カンダタも叫ばなかったかな?
むりでしょうねえ。
by Sha-sindbad
| 2011-07-17 11:56
| Kinoplasmat25/1.5a
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