2054 心から笑う(2018年7月31日大阪東洋陶磁美術館でパンタッカー50㎜F2.3が活躍)
畏友のRAさんは心身ともに頑健そのものの人でしたが、
80を過ぎたあたりから、体調を崩されることが多くなり、
一緒に撮影するのも間遠になっています。
昨年7月31日が一番新しい撮影日。
梅田から出発して、中之島の東洋陶磁美術館を目指しました。
この日はしっかりと歩かれ、しっかりと撮影もされ、
座談を楽しむ一日でした。
私の装備は、ソニーα7にパンタッカー50㎜F2.3を付けて、
いわば、私のセカンドベストでした。
ちなみに、このレンズを宮崎さんに依頼されたのは彼で、
私は彼からこのレンズを譲り受けたのです。
スピードパンクロ50㎜F2のような凄み、切れ味はありませんが、
不思議に濃密な空気感が溢れ出るようで、
どこかなにかが違う描写力は天下一品と言いたいほど、
そう言いたいのですが、
このあたりの印象はどうやら私の思い入れなのかも知れず、
つまるところは、私との相性なのでしょう。
このような私のこのレンズに対する思い入れの深さは、
私の朝鮮陶磁への思い入れに似ているかも知れません。
私は陶磁のことなど何にも知りません。
ただ20数年前、この美術館近くに職場を得て、
たまたまの手隙に、さして関心もない癖に、
なにを思ったか、美術館にちょっと立ち寄ったのですが、
展示室の半分を占める朝鮮陶磁など全然目にも止まらず、
当座は、この美術館の目玉である、2つの国宝、
飛び青磁と油滴天目茶碗に目を奪われ、さらには、
ふっくらさんの唐三彩少女像を愛するようになりました。
美術館側にもこの少女像を飛っきり愛する方が居たようで、
この像だけ回転する丸テーブルに置かれていました。
今回の写真の中にもその一周の連続撮影を並べました。
さしものアストロ・ベルリンの名レンズも歯が立ちません。
微妙なカーブの変奏曲に全身を包まれた少女の美しさは、
是非ご自分の目で味わっていただきたいものです。
でも、どんなものにも、この美術館の本当の魅力に、
私は長い間気づきませんでした。
その間、私は、中国陶磁の偉大な名品を味わうことで、
見る目を養っていたのかも知れません。
何事も、それを理解できるまでには、時間と準備が必要、
そういうことかも知れません。
ある日、朝鮮陶磁が私の目に飛び込んで来たのです。
これまで何にも考えずに軽く一瞥しただけで通り過ぎていた!
でも、突然、それがとんでもなくおかしいことに気づいた!
なにかが違う!
ふっと、肩の力を抜いた感じ、
そう言ったら、お分かり頂けるでしょうか?
「そう気張りなさんなって!
ゆっくり行こうよ!」
そんな感じ。
どの白磁も青磁も、精一杯姿勢を正したりしていません。
「休め!」の号令で、休んでいるわけでもない。
生まれついてのナチュラルな姿のまま、そっと微笑んでいる。
気がつきますと、私もリラックスしています。
そして、思わず笑いがこみ上げてきます。
この世に「笑い」ほど素敵なものはありませんね。
そして、幼児の笑いほど純粋な歓びの表現はありませんね。
そう、幼児は、なんの屈託も無く、
心と体のすべてで歓びを感じ、笑うことができるのです。
大人になると、そんな風に屈託なく、純粋に喜び、
純粋に笑うことができなくなります。
まるで天井からなにか倒れてきて、これを支えながら、
なにか別のことをしようとしているみたい。
心から笑うためのエネルギーが不足しているみたい。
笑ってる場合か、来月の給料、もらえそうにないのに!
でも、人生って、小休止があってもいいですね。
東洋陶磁美術館の朝鮮陶磁のコーナーに入ったら、
鎧も経帷子もなにもかも脱ぎ捨てて、なにもかも忘れて、
心を全部開いて、朝鮮陶磁たちと語り合ってみましょう。
パンタッカー50㎜F2.3はそれができるようです。
私もなんとかそんなことができるようになってきたみたい。
by Sha-Sindbad
| 2019-01-31 12:19
| PanTachar50/2.3
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