レンズ千夜一夜

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286 暮れ方 (イヴォタール25mmf1.4は英国紳士の夢の形なのかな?)



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今日は出勤にクックのレンズを携行しました。
私が抱くブリティッシュのイメージにぴったりのレンズ、
そう考えますと、
ダルメイヤーではなくて、クックがそうだと言うべきでしょう。

    イヴォタール25mmf1.4

クックの16㎜映画用レンズの標準レンズなのでしょうか?
これは、暮れ方の逆光での開放の描写。

イギリスのエリート層である貴族・紳士に課せられた責任があります。

    ノブレス・オブリージュ

高貴なるものが果たすべき義務があり、
地位、立場にふさわしい責任を果たすべきである、というのです。

    第一次大戦では、まだ封建制の名残のようなものがあって、
    貴族たちが各地域の連隊を組織して、
    その指揮官となって出征しました。

    第一次世界大戦は文字どおり肉弾相打つ殲滅戦でした。
    参戦した主要国、英独仏の指揮官の損耗率は、
    ダントツにイギリスが高かったのです。

    その理由は、将軍を含めて高級指揮官たちが前線で、
    兵士達の先頭に立って戦ったからです。

    独仏の将軍たちが前線から何十キロも後方に
    指揮所を設置して、安穏と「進めー!」とやったのと対照的でした。

イヴォタール25mmf1.4を使うと、
液晶でもはっきりと分かる、その明晰で毅然たる描写に驚いて、
思わずノブレス・オブリージュを思い出しました。

    開放で、もちろんフレアがかかり、バックはぼけるのですが、
    前方に向かってぐいぐいと切れ込んでゆく風情があり、
    浮かび上がる像に、凛然としたたたずまいが感じられるからです。
    
もちろん完全なるこじつけ。
でも、こんな風にこじつけたくなるほどに魅力的なレンズ。
by Sha-sindbad | 2012-03-30 22:07 | Ivotal25/1.4 | Comments(2)

285 自転車 (バルター50mmf2.3はパンタッカーと双璧対極の開放美人)



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映画用レンズとスチール写真用レンズと、
この2種類のレンズの作り方、性能には違いがあるのでしょうか?

幾人かの方から、映画用レンズは、
スクリーンに投影してもなおシャープな画像を作り出すため、
それだけ高性能を要求されたと聞きました。

でも、どんな場合でもそうですが、
特化された性能は、別のシーンでは逆効果となりかねません。

なるほどスチール写真用レンズを映画に使ったという話はあまり聞きません。
映画用レンズに要求される水準を満たしていないのかも知れません。

でも、スチール写真は、昔の引き伸ばしで言えば、
せいぜい全全倍に伸ばせれば、十分だったのですから、
むしろ繊細微妙な味わいを求める方向では、
映画用レンズを超えているのかも知れません。

このあたりのことはまるで無知なので、
これは単なる頭の遊び。

近ごろ、映画用レンズを多用して感じることは、
まるで区別が付かないということです。
優れたレンズとなれば、ライカで使う限り、
映画用、スチール用などとことさら意識する必要はなさそうです。

ボシュロムのバルター50mmf2.3
確かに開放から強烈なる高解像レンズ。
平面を撮る限り、周辺まで像が崩れません。
立体感も色彩も文句なし。

でも、優等生的な仕事はしてほしくありませんね。
だから、パンタッカー50mmF2.3と同じ土俵に上っていただきましょう。

     -2まで切り詰めて、なにが起こるか?

無茶な使い方です。
でも、バルターは余裕綽々です。
キリリと像を結んでいるのに、
あたたかなふくらみを感じるのか、私だけでしょうか?
by Sha-sindbad | 2012-03-29 21:34 | Baltar50/2.3 | Comments(0)

284 ゴミ袋 (キノプラズマート16mmf1.5は颯爽たるボケレンズ)



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異色の画家neonさんのホームページ
Neontica works
(http://neontica.tumblr.com/)
そのfavoritesの頁で見つけました。

    「文章
     坂口安吾「日本文化私観」いつも私の根底にあります」

そこで、気がつきました。
そうだ、坂口安吾を読んだことはなかった。

さっそくアマゾンで岩波文庫を取り寄せました。

    「堕落論・日本文化私観」他22編

早速読み始めました。
そして、びっくり。
なんと切れ味の良い、そして達意の文章を書く人だろう!

しかも、ロボグラフィ論まで見つけちゃいました。
ご本人は気づいていないけれど、こう書いているのです、

    私は、世阿弥の「花伝書」に於いて、
    大体次のような意味の件りを読んだように記憶している。
    「能を演ずるに当たって、演者は、たとえ賤が女を演ずる場合にも、
    先ず「花」(美しいという観念)を観客に与えることを第1と
    しなければならぬ。先ず「花」を与えてのち、はじめて次に、
    賤が女としての実態を表現するように......」と。

私がロボグラフィでやりたいと思っていたことが、
ずばりと書かれているではありませんか。

今日、キノプラズマート16mmf1.5を持ち出しました。

    昼食後、裏道を歩いているとき、
    溝にゴミ袋が転がっているのを見つけました。
    見た途端に、気に入りました。
    ゴミ袋だとはっきり分かっています。
    でも、美しい!

    なんの細工もなく、キノプラズマート16mmf1.5でどんと撮りました。
    やっぱり、美しい。

大抵の人は、これを美しいとは思わないでしょう。
気にも留めないでしょう。
気がついても、せいぜい、

    「ああ、ゴミ袋が溝にまで転がっている。
    風が飛ばしたんだな。
    始末しなきゃ」

マツモトカメラでオーバーホールしていただいたレンズは、
筐体もレンズもキラキラと輝き、そのお陰でしょうか、
写りまで輝いています。
今日このレンズを持ち出したのは正解だったのです。
もちろん開放です。
by Sha-sindbad | 2012-03-28 22:27 | KinoPlasmat16/1.5 | Comments(0)

283 列柱 (トリプルアナスチグマート15mmF2.9ががらりと明快に)



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あなたは、レンズクリーニングをしますか?

私は一切いたしません。
下手にさわって、キズを付けてもと考えて、
専門家にお願いすることにしています。
だから、購入しても、クリーニングをしません。

友人から、キズを付けないクリーニングの秘訣を教えられました。

   柔らかいティッシュを使う(幸い家にありました)。
   オリンパスのEEクリーナーを用意(これも幸い家にありました)。
   ブロアーを使って、レンズからゴミを飛ばす。
   綿棒をティッシュでくるみ、クリーナーを付ける。
   グルッと一回りまわす。
   絶対に1回だけ。
   2回回すと、ティッシュについたゴミがレンズをきずつける。
   これを2、3回反復。

なんだか簡単そう!
一番汚いレンズをさがしました。

   ダルメイヤーのトリプルアナスチグマート15mmF2.9

試しにやってみました。
撮ってみました。

   あれっ?
   あの夢幻的な濃霧が消えているではありませんか?
   トリプルアナスティグマート25mmf2.9と同じような描写。

なんだ、あの夢幻は汚れが作り出していたのだ!

鶴橋近くのコリアンタウン御幸通りで撮った写真をごらんください。
もちろん開放です。

   ああ、ダルメイヤー!
   やっぱり、凄い!
by Sha-sindbad | 2012-03-27 22:19 | Tri.Anastig15/2.9 | Comments(7)

282 列柱 (キノプラズマート50mmf1.5は正真正銘の蜃気楼レンズ)



中国の富裕層がクラシックカメラ趣味を持ったことで、
衰亡寸前にあった世界のクラシックカメラ店が息を吹き返しました。
そればかりか、クラシックレンズは信じがたい価格高騰の波。
つまり、日本のクラシックレンズファンにとって、
逆風が激しく吹き上げているご時世。

中国のバイヤーが日本に来て、ごっそり稀少レンズを買いあさり、
これを自国の富裕層に利益を上乗せして売る。
それでも、中国の富裕層は、稀少レンズなので平気で買い上げる。
世界のクラシックレンズの価格をかさ上げする結果につながります。

以前はもっとリーズナブルな価格で売られていたキノプラズマートも、
先般、信じがたい価格で落札されたとのこと。
つまり、35㎜用キノプラズマートは夢まぼろしと化したのです。

そんな夢幻レンズをジオグラフィックさんからお借りして撮りました。
でも、私の耳はマクロプラズマートと聞こえたので、
刻印も確かめずに、75㎜とばかり思い間違って、
ごく平静に11枚だけ撮ってお返ししました。
フード付きだと50㎜とは思えないほど、長いレンズだったからです。

そうと知っていたら、一日中必死でキノプラズマートにしがみついて、
撮って撮って撮りまくったのに............................

しかも、その内3枚は暗い燈籠を撮り、
残りは全部春日大社の赤い列柱を撮っただけ。
ボケ味も、切れ味も定かではない写真だけが残りました。
不幸中の幸いは、開放で撮ったこと。



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今回の写真がキノプラズマートの性能、持ち味を、
5%も出しているとは思えません。

しかし、なんというどっしりとした描写でしょう!
ツァイスのコンタレックスレンズの軟調バージョン、
いや、どこにもない独特の重みを持つレンズ、
そう言いたくなるほどに重厚で、
しかも夢幻的。

ますます思いを強めます、

   キノプラズマートは、私の人生に、
   蜃気楼のように来て、
   蜃気楼のように去っていった。



 
by Sha-sindbad | 2012-03-26 00:37 | Kinoplasmat50/1.5 | Comments(2)

281 雨の自動車 (TV-タッカー50mmF1.5は幻のレンズか?)



大阪の老舗クラシックカメラ店、カメラのマツバラ光機で、
レンズをお借りして、近所を撮影するという幸運に恵まれました。

このレンズ、おそらく超レアもの。
名前をお聞きになったことがおありでしょうか?

    アストロ・ベルリンのTV-タッカー50mmF1.5

私はこのお店でお目にかかったのが初めて。
    http://www.m-camera.com/)
Leica-M型のlensの頁でごらん頂くことができます。

    「立体感、臨場感、発色性に抜群の定評があります。
     1.5の開放絞りでは柔らかく美しい描写を醸しだします」
     という説明があります。

胸をわくわくさせて撮ってみました。
折悪しく雨が降り出し、傘はもたずで、
早々に試写を切り上げました。

その数少ない試写の1枚をごらん頂きましょう。
果たしてこの説明が正確かどうか、
ご自分で判断してみてください。



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        [後書き]
           バックの柔らかさと、合焦部分のシャープネスとが見事なコントラスト。
           私としては、文句なしに驚き。

 
by Sha-sindbad | 2012-03-25 17:19 | TV-Tachar50/1.5 | Comments(0)

280 携帯の女性 (ペンタック38mmF2.9はさすがにダルメイヤー)



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幾度か書いていますが、
私はライカM9のシャープネスをオフに設定しています。

そんな使い方をしている人はあまり多くないかも知れません。
世は高精細、高精密へと、草木も靡く風潮一色。
カメラマンは誰しも、ブレボケに悩まされ、
高忠実の理想とはまるでほど遠い、眠い画像に悩まされてきたからです。
おかげで、携帯カメラでさえも、私の写真よりも遙かに精密です。

そんな風潮がいやで、
私は、ライカM9もオリンパスE-PL1も、
いわば一番粗い画像となるように設定して使っています。

というのも、デジタルの高精細、高精密、高コントラスト設定では、
クラシックレンズの美しさは出ない、そう信じているからです。

私の強固な気持は、ちょっと表現がおかしいかも知れませんが、
コダクロームの画像以上に高精細、高精密、高コントラストな画像は、
どこか不自然で、というより、なにもかも不自然で、
私の神経に障るのです。

ペンタック38mmF2.9のような古代レンズの場合、
とりわけその気持が強まります。
古代レンズが超々精密に撮れるはずがないからです。

鶴橋駅ホームで撮りました。
これ以上シャープに撮れたら、気味が悪い、
そんな限度ぎりぎりの写り、という風に見えます。

ライカ社に文句を言いたいですね。
シャープネスをオフに設定してもなお、
ソフト的にシャープネスを加えるようなプログラムは、
ユーザーをあざむくものです。
銀塩ライカの粒状性の状態となるようにプログラムすべきです。
by Sha-sindbad | 2012-03-24 22:28 | Pentac38/2.9 | Comments(0)

279 信号待ち (アポクロマート25mmF2は雨の夕暮れもしっかりとらえ)



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アポクロマートレンズに関心を持ったのは、20数年前でした。
クラシックカメラ店で、6×9判蛇腹カメラを手にしたのです。

    エンサインのオートレンジ820

ロスエクスプレス105mmf3.8というレンズが付いていました。
店主がレンズの頭を指さしました。
たしか赤、青、緑の3点が三角形に付いていました。

    「これが3色補正のアポクロマートレンズの印ですよ」

お値段はさほどではなかったのですが、
筐体が並外れてがっしりして、かなり重さでした。
武骨で、ついに使う気にはなれませんでした。

惜しいことをしました。
近ごろ、このカメラ、見たことがありません。

その後まもなく、アルパ用のアポクロマートレンズを入手しました。

    キノプティックのアポクロマート100mmf2。

玲瓏凛然たる描写でした。
凄いのですが、あまりに切れ味が凄すぎて、
結局は手放してしまいました。

このレンズの弟分のようなCマウントレンズが、

    アポクロマート25mmF2

簡単に言いますと、

    イケメンのレンズ
    颯爽たる写り

あなたが明晰な頭脳、明晰な感性で、
明晰な画像を求めているのであれば、
ちゅうちょなく、キノプティックをお勧めします。
たしかにアポクロマートレンズの効果抜群という感じ。
(ほんとにアポクロマートレンズを使っているか、実は知りませんが)

私は、讃歎いたしますが、
茫漠、曖昧模糊としたダルメイヤーを愛する人間。
ということは、
茫漠とした頭脳、茫漠とした感性だからなのでしょうねえ....
by Sha-sindbad | 2012-03-23 21:32 | Apochromat25/2 | Comments(0)

278 喫茶店 (ホロゴン15mmF8は水平思考が定石かな)


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喫茶店で新聞を読んでいます。
珍しいですね。

私は彼女から1m程度しか離れていません。
腰だめのホロゴンをかすかにしゃくったようです。
ちょっと上下に歪みました。
でも、長年の癖で水平は保っています。

ホロゴンの凄いところは、
たいていドンピシャリ、一番よいところで、
切り取ってくれること。

もちろんスキャン時にほんの少し、
白枠のため少し、フルフレームから削られています。
でも、そんな風に削られたときに、
窓枠の下の線がちょうど下端に来ています。

このあたりの絶妙な計算をホロゴンがしてくれた?
まさかね。
(もちろん、私が意識的に切り取りをしたわけではありません。
どこまで写るか、まるで予測不能、計算不能なのですから)

ホロゴンだけではないでしょう、
近ごろの超広角は歪曲収差がほとんどないのでは?
そうすると、超接近水平垂直撮影法が有効となります。
超広角で、水平線を出しますと、
かなり気持ちの良い写真になりますね。

そして、何よりもよいことは、
この写真が何㎜で撮ったか、
まるで分からなくなること。

それじゃ、いやだ、
超広角のパースペクティブを活かしたい、
そうお考えの方が多いかもしれません。
私は、どんなレンズでも、素直に撮りたい。
パースペクティブの歪みは邪魔、そう考える人間。
こういうのを「ひっそりホロゴン派」と呼びます。
by Sha-sindbad | 2012-03-22 17:57 | Hologon15/8 | Comments(2)

277 自転車 (アンジェニュー25mmF1.4は気品のレンズ)



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マツモトカメラから受け取ったオーバーホール済みのレンズ2本、
その1つがアンジェニュー25mmF1.4。

いつもながらの誠実そのものの仕事ぶり、
ほとんど新品とまがうほどに見事な仕上がり。
曇っていたレンズもピッカピカ。
その描写の変化をみたかったので、
出勤日、持ち出しました。

№276のアンジェニュー25mmF0.95へのコメントで、
Cマウントレンズの大先達、ktf_designさん、

    「Angenieuxのクロームメッキのボディのレンズは、
    ヘリコイドの仕組みの影響で、かさついたフォーカシングになりますね。
    経年劣化で硬いものが多く困ります。
    OHしても滑らかなタッチとは程遠いので、
    Angenieux独自の味と割り切って楽しむしかありませんね」

ところが、このF1.4のヘリコイドはどうでしょう?

    蜜のようになめらか!

こんなにソフトに回転するレンズはざらにはありません。
ありがたいことです。

もしヘリコイドの硬い愛用レンズをお持ちでしたら、
マツモトカメラでオーバーホールをお試しをお勧めします。

さて、肝心の描写。

    これが仰天の変化。

F5.6に絞りました。
かなり使い古した自転車ですが、
この絢爛たる輝き!
F5.6に絞って、硬くはならず、華麗になっています。
かなり強い反射を優雅に受け止めて、ダイヤモンドに変容させ、
シャドウのブルーの多様なグラデーションも上質。
非の打ち所がない、そう言いたいほどに、気品が漂います。

    さすが、アンジェニュー!
by Sha-sindbad | 2012-03-21 21:46 | Anjeniueux25/1.4 | Comments(4)