レンズ千夜一夜

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48  曲がり角 (ジュピター12は気だての良い娘で)



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ロシア軍が第二次世界大戦に得た戦利品の中で、
ツァイスの技術者や光学機器が占めた大きさは、
かなりのものがあったのではないでしょうか?

軍事技術及び科学技術の発展において光学が果たす役割は、
無視できないほどに大きいものがあります。
あらゆる種類の精密機械に必要とされる精度を確保するためにも、
光学検査機が必要なのですから。

その反面、戦後ツァイスがあまり順調に発展できず、
カメラ、レンズ部門に限って言えば、
自力で成功することができなかったことには、
ロシア軍がツァイスの技術者や光学機器を
ごっそり持ち去ったせいもあるかも知れません。

でも、そのお陰で、私たちは、高価なツァイスレンズの代わりに、
とても廉価で、性能の劣らないレンズ群を利用できるようになりました。
ジュピター12はそんなレンズの代表格。

ツァイスがレンジファインダー型コンタックスのために作った、
ビオゴン35mmF2.8は銘玉の誉れの高いレンズですが、
どちらかというと、戦前の方が評判がよいようです。

ツァイスはLマウントでも供給したようですが、レア。
戦後ビオゴンは私も持っていますが、強烈にシャープ。
なにごとも過ぎたるは及ばざるがごとし、です。

戦前のビオゴンはもっと柔らかという評判なので、
そのコピーであるジュピター12はまさにねらい目。
近ごろ、縁あって、我が家にやってきました。

使ってみると、軽く小さく、使い勝手がよく、よく写ります。
いつか別の縁で、戦前ビオゴンが我が家に来たら、
一度、撮り比べてみたいものですが、今から推測できます。

1 必ずビオゴンの方が素敵な描写力を発揮するでしょう。
2 でも、突き合わせなければ、ジュピター12で十分でしょう。
by Sha-sindbad | 2011-07-31 20:56 | Jupiter35/2.8 | Comments(2)

47  靴店 (セプトン50mmf2ならそっくりそのまま撮れてしまう)



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そんなに沢山使っていないので、確かなことではありませんが、
これまで使った限りにおいては、
ドイツのレンズ各社には、
なにか連綿と続くレンズポリシーがあるようですね。

    ツァイスは、男性的で実在感溢れるレンズ。
    ライカは、女性的であたたかな情感を醸し出すレンズ。
    シュナイダーは、きりっとした切れ味のレンズ。
    そして、フォクトレンダーは、さらりと澄んだ味わいのレンズ。

セプトン50mmF2は、そんなフォクトレンダーの味わいを色濃く持っています。

このレンズが最高、そう信じている人もいるそうです。
そんな言葉を伝え聞いて、17、8年前、手に入れてみました。

デッケルマウント・アダプタを手に入れて、
キャノンイオス1Nに付けました。
すると、さらりとこんな写真が撮れてしまうのですから。
私も頭から否定する気持ちにはなれませんね。
by Sha-sindbad | 2011-07-31 09:59 | Septon50/2 | Comments(2)

46  清楚 (ゾナー180mmf2.8は開放で勝負!)



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笑わないでくださいね。

私のようなストリート中心の人間に、
この写真!
似合いませんね。

十数年前、妻と一緒によく初心者写真教室に参加したことがあります。
すでに写真を始めてから20年ばかり経っていましたが、
心は、当時もいまも初心者。
学ぶ姿勢を失っていません。

でも、風景写真を学ぶ気持ちは別。
初めからないので、失ったのではありません。

でも、ストリートフォトの初心者写真教室なんてありませんね。
ですから、奈良の風景写真家の1日教室に参加。

私、当時はまだ一人前に三脚を持っていました。
ジッツォの大型三脚、全部伸ばせば2メートルを超します。
時は秋、場所は飛火野、
三脚にゾナー180mmf2.8を付けたコンタックスRTSⅡをセット。
1キロ近いゾナーを付けても、この三脚ならお辞儀しません。

ファインダーをのぞいて、この構図を決めました。
   「先生、お願いします」
先生、ファインダーをのぞいて、
   「ちょっとこのカメラ、のぞいてみて。
    いいよ」
30人ばかりの生徒さん、順繰りにのぞきました。
ふと見ると、妻ものぞいているではありませんか?

   私、「どうだった?」
   妻、「うん、いい」

この対話の記憶は、私は死ぬまでもってゆくでしょう。
なぜか?
妻に写真をほめられたのは、これが、たった一度だった!

写真としてどうか、私には分かりませんが、
オリンピアゾナーの開放は極上でした。

私は、ほとんどのレンズ、2、3段絞って使ってきましたが、
ゾナー180mmf2.8だけは例外。
開放をかなり常用した記憶があります。
いつもなにか喜びをくれるレンズでした。
by Sha-sindbad | 2011-07-30 21:24 | Sonnar180/2.8 | Comments(2)

45  艶麗 (ロッコール28mmf3.5はけれんみの無さが身上)



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コンタックスT2のライバルは沢山ありました。
でも、私が使った高級コンパクトカメラの白眉は、なんと言っても、

    ミノルタTC-1

この古典的なまでに端然としたボディに埋め込まれたレンズが、
28㎜レンズの白眉とも言うべき、
    
    ロッコール28mmF3.5

時は真夏、場所は、上海の下町。
両側に質素な民家が並んでいました。
その一軒の玄関扉が開いていました。
中はいきなり台所です。
その向こうに、いかにも涼しげな中庭も見えました。
人は誰も居ません。
玄関からちょっと身を乗り入れるようにして、一枚頂きました。

当時、リコーGRも使いました。
こちらも28㎜の銘玉が付いています。
いかにも凄い、と仰天させられる写りでした。

アラーキーがTC-1を、森山大道がGRを愛用していることは有名でした。
ミノルタTC-1の方がずっと上品端然としたたたずまいで撮れます。
それなのに、どうしてアラーキーなの?
これが不思議でした。
なぜって、私もミノルタTC-1の方が好みだったのですから。
私には似合っているけど、
アラーキーにはなあ......
by Sha-sindbad | 2011-07-29 21:24 | Rokkor28/3.5 | Comments(2)

44  驟雨(ゾナー38mmf2.8でブレッソンしてみた)

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№42で、noriさんのコメントにお答えして、こう書きました、

    HCBさんこそ、私の永遠の写真の神様。
    おかげで、雨が好きで、水が好きで、足が好きで.....
    そんな方、いっぱいおいでになりますね。
    noriさんだって、そうじゃないですか?
    結果は、写真の神様のプレゼントです。
    似たような写真をもう一枚持っています。
    近いうちにアップしますね。

HCBさんは、もちろんアンリ・カルティエ=ブレッソン!
こんな風に書きますと、もうこちらのうずうずして、待っていられない。
さっそくお送りします。

15年以上前のことです。
イギリス西部のチェスターの町に参りました。
ザ・クロスと呼ばれる変形交差点が町のお臍。
その周囲には、中世そのままの2階建て商店街。
2階は店の前にプロムナードが設置されていて、
階下の敷石が敷き詰められた美しい広場を見下ろすこともでき、
雨の日には濡れずにショッピングができる工夫。

到着したのは朝でしたが、
このザ・クロスに立って、
ちょっと暗い雲のかかる空を見ながら考えました。

    夕立が来たら、プロムナードに上って、交差点をスナップしよう。

生涯にただ1回だけ、私は、あらかじめロケハンをしたのです。

町をぶらぶらと撮影して、午後3時、ザ・クロスにかかったとき、
ざっと夕立が襲来したのです。
    なんたる幸運!
さっとプロムナードに駆け上り、
プラナー50/2付きコンタレックスをアイレベルに。
一枚シャッターを切りました。
    落ちない。
    一本撮り終わっていた!
    なんたる不運!
ベルトケースからサブのコンタックスT2を取り出しました。
ぬかりなく、フィルム残量をチェック!
    34!
    あと2枚か3枚しかない!
やむなく、これで勝負!

絞りをf5.6に絞り、シャッター速度が60分の1になるようにしました。
人と雨をすこし流したかったから。
当時は、こんな風に生意気に作画していたのですね。
    
その瞬間、左の建物からワイシャツ姿の金髪青年が飛び出しました。
咄嗟に一枚切りました。
後2枚切りましたが、最初の写真がベストでした。

夕立雲のおしりあたりの雨だったのです。
西の空は雲が切れ、煉瓦壁の建物、道をバックにして、
陽光が雨脚、路面そして人を浮き出してくれました。
雨脚を撮れる絶好のかつ稀なる条件だったのです。

T2はタイムラグがかなりあります。
私がシャッターを切ったとき、青年は中央でした。
うまく流れ、路側帯の上にかかり、
しかも、青年のかかとは路面から浮いた瞬間に撮れました。

     完全なる幸運!

この写真を全紙にのばしたとき、
コンタックスT2のゾナー38mmf2.8の実力を知りました。
細部まで克明に立体感、実在感よろしく写し止められ、
バックの唯一電灯のある店の室内まで鮮明に写っていました。

私の生涯ただ一枚の傑作スナップをものにしてくれたのは、
コンパクトカメラの小さな小さなレンズでした。

    「小さな巨人」という言葉はこのレンズのためにあります。
by Sha-sindbad | 2011-07-28 13:59 | Sonnar38/2.8 | Comments(16)

43  赤2題 (エルマー50mmF3.5は古さを感じさせないね)


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エルマー50mmf3.5

とても気に入っているので、あと2枚、京都撮影分を出しておきます。

どちらを見ても、古さをぜんぜん感じさせませんね。
2枚目なんて、とてもクリアーで、素敵な色合いではありませんか?

ノンコーティングのレンズですが、
私は基本的に順光を撮りますので、
レンズが古くても、素性がよければ、問題はないのでしょうか?

それとも、ライカM9というカメラのおかげなのでしょうか?

とにかく、使えるレンズですね。
by Sha-sindbad | 2011-07-27 18:56 | Elmar50/3.5 | Comments(0)

42  祇園 (エルマー50mmF3.5が天才に出会ったとき)

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エルマーって、シンプルなレンズですね。

3群4枚と、レンズ枚数も少なく、
1902年ツァイスのパウル・ルドルフ博士発明のテッサーに似ています。
シンプルだと、写りも明快になるようですね。

4枚選んでみました。
最初の3枚はf5.6あたりに絞っています。
最後は開放。

カルティエ=ブレッソンもこの頃のエルマー50mmf3.5で、
彼の最初の傑作群を撮ったはずです。
カルティエ=ブレッソンは、最初からカルティエ=ブレッソンでした。

天才が銘玉と出会ったときに、その効果は爆発的だった。
by Sha-sindbad | 2011-07-26 11:51 | Elmar50/3.5 | Comments(4)

41  白馬 (エルマー50mmF3.5は永遠の標準レンズ)



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エルマー50mmf3.5

バルナック型ライカが発売された1925年から1961年まで延々と製造し続けられた、
バルナック型ライカのスタンダードとされる標準レンズですね。

どうやら時代を経るにつれて、写り具合は微妙に変わっていったようです。
当然のことですが。
でも、新しいほどよいという訳にはいかないようです。

エルマー50mmf3.5のファンはかなり多いようですが、
どの時代のエルマーを良しとするかは、人様々。
食べ物とレンズの味わいは議論しない方がよろしいようです。
ただ、シンプルに好き、好きじゃない、これで十分ですね。

でも、私の友人のクラシックレンズ愛好家O氏曰く、

    「そりゃ、エルマーは古ければ古いほど、いい!」

私は、こういう考え方には、わけもなく賛成したくなる方です。

とはいえ、好きも嫌いもあったものじゃありません。
たった一本しか使ったことがないのですから。

私のエルマー50mmf3.5のシリアル番号は
「120100」

私の持っているライカレンズブックでは、
1933年製造分が156001〜195000とあり、
それより若い番号のものについての記載がありません。

なんでそれ以前の番号について年代が特定されていないのでしょうね?
記録が残っていないということでしょうか?

そこで、1932年以前の156000個が8年間に均等に生産されたと、
かってに仮定してみましょう。すると、
120100番は6年目の頃、つまり、1931年頃のものとなりそうです。
とすると、O氏が推奨する「古いエルマー」にかなり近いのでは?
そんな風に考えて、ちょっと嬉しくなったりしています。

でも、80年前のレンズとは思えないほどに、
レンズは美しくクリアー、
鏡胴は古色蒼然たるたたずまいで、気に入っています。

写りは?
開放の描写はごらんの通りです。
どこにも古めかしさが見あたりませんね。
尖ったところがなく、とても円熟した表現をしてくれます。

明日、絞った写例をアップします。
それをごらん頂いてから、評価していただければよいのですが、
私としては、文句なしによい、そう言いたいところ。

いかがでしょうか?
by Sha-sindbad | 2011-07-25 22:08 | Elmar50/3.5 | Comments(2)

40  艶麗 (ゾナー180mmf2.8でとろけるように)



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今でこそ、広角系に傾斜していますが、
以前は望遠系もかなり愛用していました。

その中で、文句なし№1で気に入ったのが、

    コンタックス・ゾナー180mmf2.8

今回は、最短距離での開放の描写をご覧下さい。

ヤシカ・コンタックスの第一世代、西独製のゾナー。
大砲のように太い鏡胴で、約1キロの重量級でした。

でも、これならなんでも撮れる、そう思わせる使い勝手のよさに
しびれ続けました。
なにをどう撮っても、絵にしてくれるレンズ。

とくに開放時の被写界深度が、なぜか、深く、
ボケ味は、ファインダーで見ても、しびれるほど。

もう今では一眼レフを使わないので、無縁のレンズとなりました。
でも、懐かしい。

ゾナーを三脚につけて撮ったことはほとんどありません。
すべて手持ちで撮りました。
重量級の三脚でないと、かえってぶれるし、
第1、私は三脚が大嫌いだったからです。
なれると、ぶれたりしませんね。
なぜか?
重いから。
by Sha-sindbad | 2011-07-24 18:02 | Sonnar180/2.8 | Comments(4)

39 ニーハオ! (キノプラズマート25mmf1.5aで夢遊の人となり)


参りました!
参りました!

さきほどお気に入りのブログを十数個巡回しました。
これが1日の喜びの1つなのです。
毎日欠かさず巡回します。
面白い記事、よい写真にぶつかると、手を打って喜び、
更新されていないと、どうしたんだろうかと心配になり。

中将姫光学さんのブログで、まず、いつものとおり、
掲載写真に讃歎し、ついで、もう一つの楽しみの文章を読んでいると、
あれあれ、私のブログのことでした。
         (http://zunow.blog51.fc2.com/)

私のブログが終結したこと、そして、その理由に悲しい思いをされたとのこと。
思ってもいないことでした。

このブログは、同じレンズ愛好家の皆さんに向けて作ることにしたのです。
レンズのことをあれこれ話し合いたかったから。
でも、ほんの少しのコメントが数日ごとにぽつりとあるだけで、
レポートを調べると、おいでになる人ももう寥々たる、最果てブログ。

よく考えてみますと、付け焼き刃の初心者ブログなど、
練達のレンズ愛好家には、笑止千万の記事だし、
レンズ愛好家ではない方にはまるきり無縁の辺土。

こりゃ、あかん、
誰も反応しないのじゃ、やっても無駄。
1人でレンズを楽しんでいればいいのに、余計なことを始めてしまった!
そう考えたのです。

でも、私にとっては、数少ないリファレンス・ブログの主が、
私のブログを「楽しみ」とお感じになっていたことがわかりました。
そんな風に思っていただく方が1人でもおいでになるのであれば、
私は無駄なことをやっていたのではなかったのです。

というわけで、よろこんでブログを再開させていただきます。

再会を祝して、
撮れたての写真を一枚プレゼントします。



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私にとって、「愛キノプラズマート」と呼びたくなるほどのいとしいレンズ、
キノプラズマート25mmf1.5aの開放の作例です。
       (注:ライカMマウント改造版がb、Cマウントオリジナル版がa)
こりゃ、皆さんが夢中になるのも無理はありませんね。
by Sha-sindbad | 2011-07-23 23:34 | Kinoplasmat25/1.5a | Comments(2)