レンズ千夜一夜

カテゴリ:Kinic25/1.5( 8 )

1251 呑み屋横町で (キニック25mmF1.5は空気感をたっぷりと出してくれる)





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裏ぶれたただのおっさんという風情。
でも、話し始めると、どこか腰の据わった話し振り。
その内容も、なんでもないように見えて、深みがある。

    その御仁が立ち去る後ろ姿を見ながら、
    側に居た人がこう教えてくれる、
    「あの人、ああ見えても、実は詩人で、
    十冊以上も詩集を出して、国際的にも名の知られた人なんですよ。
    でも、絶対に偉ぶったりすることのない人なので、
    このあたりではとても敬愛されている人なんですよ」

そんな情報に接すると、にわかに印象が変わってきて、
さきほどは、「ただのおっさん」じゃないかと思ったくせに、

    「やっぱりねえ、どこかただ者じゃない感じがしましたよ」
    なんて、にわかに尊敬の眼差しで御仁を見送る。
    そんなことがときにはあるものですね。

こう書きますと、あなた、考えていますね。

    「そう、なにを隠そう、ぼくもそんな人間なんだよ」、なんてね。
    でも、たいてい、それはただの独りよがりというものですね。

私にとって、これと似た体験をした思いです。

    ただのボロ廉価版映画用レンズと思っていたキニック25mmF1.5って、
    まさに由緒ある伝統を受け継ぐペッツヴァールレンズだった!

    そう考えますと、なんでもないレンズの描写が、
    この上もなく上等に見えてきたりしますね。

そんな評価が大方の賛同を得られるかどうかは二の次。

    クラシックレンズによる写真を楽しむ人間としては、
    こんな独りよがりができるのが、レンズとの付き合いの醍醐味。
by Sha-Sindbad | 2015-02-06 18:14 | Kinic25/1.5 | Comments(4)

839 台風の前に2(キニック25mmf1.5は陰々、我が心は真っ赤っか)



前回に続けて、水曜日出勤時、
キニック25mmf1.5写真の後半をごらん頂きます。

ますます陰々滅々たる写真が並びますが、
私の心は赫奕燦然と輝いていました。

    私が孔雀なら、もうあたり一面きらきらと煌めきながら進む姿に、
    行き交う女性たちはうっとりと見とれたことでしょう。

でも、孔雀じゃないので、

    くすんだ背広姿がなぜか路傍にしゃがむ姿に、
    行き交う女性たちはさぞかし..........

おっと、自分で言う筋合いはありませんね。




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ホルヘ・ルイス・ボルヘスは、講演集「七つの夜」(岩波文庫)で、
「千一夜物語」を取り上げています。

ボルヘスは言います、

    「私が思うに、これは世界で一番美しいタイトルのひとつです」

そして、その理由を説明します、

    「私たちにとって、「千」という言葉は、
    「無数」のほぼ同意語に等しいからです。
    千夜と言うのは無数の夜、数多の夜、数え切れない夜と言うのと同じです。
    「千一夜」と言うのは、無数に一を加えることです。

    英語におもしろい表現があります。
    「永遠に」という意味でfor everと言うかわりに、
    ときにfor ever a dayと言うことがあります。
    「永遠」という言葉に一日加えるのです。
    このことは、「君を永遠に、さらにその後も僕は愛するだろう」という、
    ハイネがある女性に捧げたエピグラムを思い出させます。

    無数という概念は「千一夜物語」の本質をなしています」

ボルヘスがこの講演を行ったのは1977年なのだそうです。
つまり、盲目となって20年以上経ってからの講演なのです。

    それなのに、彼の言葉の隅々に古今東西の古典、書籍
    に対する深い造詣が散りばめられています。
    大英博物館の図書館の本を全部読んだただ一人の人間という、
    伝説さえ残されている南方熊楠ほどの広氾な学識ではないかもしれません。
    でも、熊楠はその膨大な学識を民俗学の論文に注ぎ込んで、
    ついに古今東西の偉大な古典を題材にした書物は残してくれませんでした。
    その意味で、ボルヘスの書く文章は、
    それが小説であれ講演であれ、
    古今東西の偉大な古典を踏まえたスケールの大きな知見が
    行間に散りばめられているという点で、
    大変に読みごたえがあります。

そんなボルヘスが「千一夜」という言葉の深い意味を明らかにしてくれたことは、
私にとってかなり画期的な発見でした。

    すでにこのブログも第839夜にたどりついているのです。
    残すところ162夜。
    つまり、5ヶ月ほどで千一夜に到達します。
    漠然とですが、千一夜目で大団円としよう、
    そんな風に考えていたのです。

ところが、ボルヘスは「千一夜」は1001ではなく、
無数を意味しているのだとおっしゃるのです。

    じゃあ、命つきるまで続けるのが正しいのでは?
    そんな感じがしてきました。




 
by Sha-sindbad | 2013-10-24 21:54 | Kinic25/1.5 | Comments(4)

838 台風の前に1(キニック25mmf1.5はもしかすると、稀代の名レンズ?)



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今日はテーラー・ホブスンの普及型レンズを持ち出しました。

    キニック25mmF1.5

コンパクトでとても使いやすいので、
近頃ずっとカメラはオリンパスEP-L1。

すでに台風27号の影響か、しとしととそぼ降る雨。
このレンズは開放値が1.5ですが、いつものように、開放一点張り。
今日はかなり暗いので、開放撮影には都合のよい1日でした。

幾度も書きますように、私の場合、ほとんど全部開放で撮ります。
少し絞れば完璧な画像になることは分かっているのに、そうします。

    写真は立派になりますが、私の気持ちにはそぐわない。
    開放のゆるゆる画像が私という人間にはぴたり合っています。

ところが、このキニック、もしかすると、カイニックというレンズ、
開放から中央部分のシャープネスは十分なのです。
だから、とても中央を活かしやすい。

雨の中歩きながら考えました。

    ロボグラフィこそ、私の安住の地なのだ。

    出勤の度にレンズを持ち歩いていますが、
    わあ、こんなのがここに隠れていた!
    今まで気づかなかったけど、こんなところに、
    とんでもなく楽しいものが隠れていた!
    そんな気持にならなかったことがないのです。
    いつもなにかを発見できます。

とくに雨の日。
私には無上の喜びと言える、ささやかな発見を
今日は散歩歩く度に経験することができました。

スナップ写真家にせよ、風景写真家にせよ、
稀にしか起こらないような、
圧倒的にフォトジェニックなシーンを探します。
徒労に終わる日も多いでしょう。

    ロボグラフィではそんなことは起こりません。
    なんでもよい、身近なものにレンズを向けさえすればいい。
    私のように徹底的に無名の素人には、
    身近なものたちをただ撮るだけ、これが一番ですね。

今日撮ったのは、たったの70枚ですが、
その中からお気に入りを28枚選択しました。
明日は写真を撮る機会がないので、
2回に分けて、時間順にごらん頂くことにしました。
by Sha-sindbad | 2013-10-23 19:57 | Kinic25/1.5 | Comments(2)

801 昼食の道筋で(キニック25mmf1.5はやっぱり私の期待に背かなかった)



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今日の出勤にはオリンパスEP-L1を携行。

    レンズはキニック25mmf1.5。
    テーラー・ホブソンのおそらく普及タイプのレンズ。
    でも、とてもよく撮れる、私のお気に入り。

撮り始めのときにいつも感じることがあります。
今日は朝は撮影できなかったので、お昼どきです。
職場を出るとき、こう思うのです、

    ① 今日もレンズを持って歩ける、
        うれしい!
    ② でも、今日は撮るものがあるんだろうか?

とにかく2011年8月3日以来かっきり2年間、
出勤の度に一日も欠かさず撮影してきたのですが、
撮影範囲はたった数ルート、撮影時間は20分から多くて半時間。
ところが、レンズに導かれて撮る人間の強みですね、
一回として失望したことはありません。

そのレンズでないと撮れない、とまでは言いません。
そのレンズならではの写真が必ずどこかで撮れます。

英国喫茶アンヌ・マリーカフェ(なんだか名前はフランス風ですね)で、
ポメラでこの文章を書きました。
職場から300mほどの場所ですが、11枚撮りました。

    トイレの中でまで撮りました。
    もちろん手を洗ってからですよ。
    ただし、トイレを出るとき、カメラは洗いませんでしたが。

とにかく毎日なんか撮れるものです。

写真ブロガーのみなさんは渾身の力を振り絞って、
それぞれに畢生の大作を次々とものしておられるのに、
私はいつもレンズサンプルだけ、というのもお笑い草ですが、

    こうして写真を撮り続けることができる、
    歩き続けることができることができるのも、
    写真で自己主張はしないでおこう、
    レンズにすべてを語らせようという選択ゆえ。

    これは神様からの贈り物だと思っています。

無神論者がこんな風に神様を持ち出すのも変かも知れませんが、

    楽しいときの神頼みって言うじゃありませんか?
        (言わないかな?)

そんな神様からのプレゼントから、
無機的なものを撮った4枚をざっと並べてみました。
by Sha-sindbad | 2013-09-13 23:57 | Kinic25/1.5 | Comments(6)

170  黄葉 (キニック25mmf1.5の開放は使えるね)



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映画用レンズを使うようになって、一番驚いたことは、

    開放描写

どのレンズもどのレンズも、開放がとてもよいのです。
テーラー=ホブソンの古いレンズも例外ではありません。

    キニック25mmf1.5

このレンズ、キノプラズマート族にけっして劣りません。
テーラー=ホブソンのレンズを数本使ってみましたが、
どのレンズもとても優れています。

言い方がちょっと奇妙かも知れませんが、
品位があり、高潔を感じます。
古き良き時代の大英帝国のすぐれた貴族たちの、
いわば、一貫した志は、

    ノブレス・オブリージュ (Nobles Oblige)

この気概をこのレンズに感じると言ったら、
大げさでしょうか?
by Sha-sindbad | 2011-12-07 22:53 | Kinic25/1.5 | Comments(3)

121 振り袖 (キニック25mmf1.5はまるで千両役者)



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Cマウントレンズを使うまで、
グルグルボケなんてものの存在を知りませんでした。

    タンバール90mmF2.2だって、盛大にぼけますが、
    まるで下戸が間違って、コップ一杯のウォッカを呑んでしまったみたいに、
    天地がひっくり返るようなボケ方はいたしません。

    マクロスイター50mmF1.8もぼけますが、
    背景が美しい夢のように漂うだけ。

ところが、Cマウントレンズと来たら、
もうメッタヤタラに、どいつもこいつもグルグルグルグル。

    まさに輪舞。

気がついてみると、撮っている方もグルグルグルグル、

    本当なら、完全なる欠陥画像のはずなのに、
    なぜか、心地よいのですから、始末に負えません。

テーラー=ホブソンのキニック25mmf1.5は、
かなり古い、長いブラックフードが飛び出している、
ノンコートのレンズですが、その点で出色!

    「シェーカーレンズ」と呼びたい位に、高速回転。
    それなのに、中央部分の立体感、リアリティ、シャープネスは抜群。

    まるで、放蕩無頼のバカ若殿を演じていた信長が、
    一転、裃に身を包まれて、凜とした貴公子に変身したかのよう。

一声、あげたくなります、

    「役者やのう!」
by Sha-sindbad | 2011-10-17 22:04 | Kinic25/1.5 | Comments(0)

84 路傍の石仏 (キニック25mmf1.5はクックらしい毅然たる写りに高級感溢れ)



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オークションサイトで、ぼろぼろのレンズを見つけました。

名声サクサクたるレンズなのに、たったの約10000円。
最下部のロゴ部分がほとんぞ全部はげてしまい、
刻印だけでかろうじて読めます。

    クック・キニック25mmf1.5
    テーラー=ホブソン社製です。

私には掘り出し物に見えるのですが、誰も買わない。
どこか問題があるのでしょうか?
そんなのどうでもいい。
もし何かあったら、マツモトカメラさんにお願いしよう。
エイヤッと落札して、届いてみたら、驚きました。

    レンズはクリーン、
    ヘリコイドもちょっと重めですが、ちゃんと動く。
    絞りリングに問題もない。

かなりのボロですが、写真で感じたほどではありません。
使えるレンズ。
早速撮って見ました。

    絞り開放での中央部分のシャープネスは第一級。
    そして、回りのグルグルボケは、もうサンバ!
        (なんのことか分からない表現ですが、
         あんまり凄いので、まるでカーニバル)

そして、一番好感がもてることは、
    写りがとても上品で端正なのです。
    無理がない。
    まるでイギリス紳士の雰囲気。
    とても冷静だけど、冷たくはない、そんな感じなのです。

気に入りました。
by Sha-sindbad | 2011-09-06 18:50 | Kinic25/1.5 | Comments(0)

66 椅子 (クックのキニック25mmf1.5はおだやかキノプラズマート?)



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3か月ばかり、Cマウントレンズを中心に、
レンズ漁りを楽しみました。

銘玉を破格の廉価版で手に入れる。
これが絶対的な方針でした。

    待てば海路の日和あり。

この言葉ほど、含蓄に富んで有益なアドバイスはありませんね。

これに超えるアドバイスと言えば、

    慣れてしまえば、皆、同じ。

この素敵なアドバイスを守って、
最初に手に入れたレンズで生涯撮り続けられる人、
この人は達人ですね。
たとえば、

    ジャコメッリ

私は達人ではないので、
海路の日和待ちの方がお好みです。
そうして手に入れたのが、

    TAYLOR HOBSON COOKE Kinic25mmf1.5

キニック?
カイニック?
どう読むのでしょうね?

Kingあり、kindあり、英語の読み方って難しいですね。
私はキニックと呼びたいですね。
キラーニー、キルケニー等々、アイルランドの地名の美しさ、
これにあやかりたいし、
こちらのサウンドの方が、キレイなので。

そして、このキニック25mmfですが、
すでにf3.5の方を持っていて、重厚真摯な描写に感嘆。

このf1.5レンズはどうなのでしょう?

たった1万円、
かなり禿げていますが、レンズをのぞいて、びっくり!
ノンコーティングのレンズの美しさはどうでしょう?
キノプラズマート25mmf1.5よりほんの少し大きく、
ほんの少し穏やかな雰囲気で、
見るからに、美しい写真をプレゼントしてくれそうなレンズ。

長いフードがレンズと一体化されて取り付けられていますが、
それにもかかわらず、マイクロフォーサーズでけられません。
うれしくなるような高級クラシックレンズ。

昨日届き、夜、一枚撮ってみました。

超リアリズムの画家諏訪敦の最新作品集の表紙。

聖ヒエロニムスが静かにシャレコウベと対決する絵は、
ダ・ヴィンチ、ラ・トゥールを含めて、沢山ありますが、
女性となると、怖いですね。

写真は、傾けて撮っているので、デフォルメしています。
本物よりももっと怖くなりました。

この1点だけにフォーカスするあたりの精密度、
周辺のやさしくさりげない、ぐるぐるボケ、
あたたかさ、
気に入りました。
by Sha-sindbad | 2011-08-18 12:07 | Kinic25/1.5 | Comments(0)