レンズ千夜一夜

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1276 室生の里で (ヘクトール73㎜F1.9って、ペッツヴァール一族なの?)



ヘクトール73㎜F1.9はかなり長い間、私のお気に入りでした。
銀塩フィルムで随分撮った記憶があります。
開放でのなんとも名状しがたい柔和な表情とボケ味にしびれたのです。

でも、ぐるぐるボケが出た写真って、実は記憶がないのです。
ところが、室生寺では、なんとまあ、
バックのぐるぐるボケ写真のオンパレード。
ペッツヴァール顔負けと言いたいところ。

私が銀塩時代に使っていたものと、
今私が持っているものとは別物です。
じゃ、レンズ構成が変わったのでしょうか?
そんなことはなさそうですね。
私のようなレンズ設計の門外漢が調べてどうするのか?
という気持ちはありながら、一応比較してみました。

ペッツヴァールは2群4枚。
この2群がぐっと離れています。
ヘクトールは3群6枚なのですが、
なんとまあ、中央2枚を取り除くと、
かなりペッツヴァールと似ています。
後群がペッツヴァールは離れているのに対して、
ヘクトールは張り合わせになっているのが違うだけ。

そうすると、中将姫光学さんに教えて頂いた、
像面フラットナーをペッツヴァールの2群の間に置いて、
非点収差と像面湾曲を軽減した設計レンズ群と、
かなり近い感じがしてきました。

じゃあ、ヘクトールって、ペッツヴァールの変形の一種?
こんな風に考えると、急にヘクトールが愛しくなってしまいます。

近頃の私は、長焦点レンズについては、こんな風に、
ペッツヴァール中心に座標軸を設定しようとしているようです。
つい2か月ほど前には、ペッツヴァールなんて別世界の存在、
そう考えていた人間のえらい変わりよう。
自分でも笑ってしまいます。

でも、今回の5枚、どう見ても、幾度見ても、
ヘクトールの写真とは思えませんねえ.....................???




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by Sha-Sindbad | 2015-03-06 22:37 | Hector73/1.9 | Comments(0)

422 通天閣界隈 (ヘクトール73mmf1.9は古き良き時代の代表格かな)



偉大な画家たちは、
人の肌と外界との境界をどう描くかということで、
苦心に苦心を重ねてきました。

人を背景から浮かび上がらせたい。
でも、下手に輪郭を描くと、リアリティを損なってしまいます。
要するに、漫画になってしまいます。
フェルメールやレンブラントは、
いわば「皮膚問題」への1つの回答を与えました。
でも、画風、描き方が変われば、解決法もまた変わります。
未だに、この問題は解決されたとは言い難い状態にあります。

写真の世界でも、同様の問題があります。
シャープであればあるほど、
ポートレートはいかにも写真くさくなってしまいます。
多くの肖像画家は、四×五判で人物を撮りました。
たしかにリアルに見えますが、
ただし、時間の中で一瞬凝固してしまったようです。

そんな限界を突破するために木村伊兵衛が選択したレンズは、

    ヘクトール73mmf1.9

文人たちを自由に動いてもらって、
当時破格の高速レンズであったヘクトールでこの動きをキャッチしたのです。

私も昔このレンズで娘たちを撮って、驚愕したことを思い出します。
あえかなほどに柔和で、それでいて、とても存在感がありました。

今日、大阪天王寺で使ってみました。
460枚の収穫から4枚選んでみましょう。
木村伊兵衛が選んだ理由が納得できる感じがするのですが........




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by Sha-sindbad | 2012-08-16 21:44 | Hector73/1.9 | Comments(2)

24 マネキン  (ヘクトール73mmf1.9は女性のためのレンズ)



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戦前、木村伊兵衛は女性や文士たちのポートレートを撮り、
一世を風靡しました。

ポートレートは大判で撮るべしというセオリーを破って、
ライカ判で撮ったことで、人物が突然生き生きと躍ったからです。

そのレンズが、
    ヘクトール73mmf1.9

ということで、私も撮ってみたい。
随分前のことですが、一本手に入れました。

当時は開放をほとんど撮らず、
たいていはf5.6あたりに絞って使いました。
ゴージャスなほどに、厚みのある描写にしびれました。

ホロゴンを初めとして、広角に移行する時期に、売ってしまいました。
後悔しています。
近ごろ、探すのですが、なかなか見つからないですねえ.....

この写真は、珍しく、開放。
ヘクトールもタンバールもボケがうるさいのですが、
こうして暗部から浮かび上がらせると、
柔和な表情だけが出てくれます。
私は、こんな黒の中の黒が好きなのです。
by Sha-sindbad | 2011-07-07 10:53 | Hector73/1.9 | Comments(2)