レンズ千夜一夜

1630 バス停までの200m(スピードパンクロ50㎜F2を持つといつもの光景も異空間に)



スピードパンクロ50㎜F2の魅力って、なんだろう?
中将姫光学さんからお借りしてから幾度も撮って、
考えあぐねてきました。

私はオペラが大好きです。
大学入学してまもなくの頃、
アンドレ・クリュイタンス指揮のカルメンのレコードを手に入れました。
レシタチーヴォではなくて、セリフが飛び交うオペラ・コミック版。
今ではこのバージョンはほとんど使われないようです。
でも、これはこれで土の香りがして、独特の雰囲気だった上に、
いつも屈託のない流麗な音楽作りをするクリュイタンスに魅せられてしまい、
オペラの世界に一歩踏み込んでしまいました。

次に、カルロ・ベルゴンツィ、レナータ・テバルディ、
ジュリエッタ・シミオナートによるヴェルディの「アイーダ」に出会って、
完全にオペラの魅力にノックアウトされて以来、長年愛してきました。

もっとも私が志向のオペラ歌手として不動の地位を確立したのは、
マリア・カラスとジュセッペ・ディ・ステファノの二人でした。
私は20世紀の生んだ最高のコンビ、そう思い、今でも揺るぎません。

ディ・ステファノという稀有の魅惑のヴォイスが本当に輝いたのは、
ソフトなリリックテノールの領域でした。
スターの地位を確立し、ライバルだったデル・モナコや、
その後に出現したフランコ・コレルリに対抗すべく、
強靱なオペラボイスを必要とするドラマチックな役柄に挑戦することで、
彼は最上の武器である、限りなくナチュラルな甘いボイスを失いました。
ロシア征服を企図したナポレオンと同じ失敗を侵したのです。

そこで、本題に入りましょう。
このフランコ・コレルリこそ、スピードパンクロ50㎜F2なのです。
強弱自在の柔軟な響きをもった歌声は、
どこまでも輝きと緊張感に満ちた稀有のヴォイスでした。
このヴォイスに類い希なる美貌と颯爽たる容姿を兼ね備えることで、
彼はある種の領域では無敵の歌手でした。
後年の三大テナーの誰もが彼を凌駕するようなオーラはもっていない、
そう言い切ってもよいほどの歌手でした。
まさに、それがスピードパンクロ50㎜F2につながります。

でも、じゃ、他のテナーたちはまったく対抗できなかったか?
そう問いかけてみますと、回答は明らかに「ノー」ですね。
とりわけ、ディ・ステファノは、マリア・カラスとコンビで、
彼の最も得意とし、彼に最もふさわしかった役柄で、
数々のLP録音を残しています。

偉大な歌手がほぼ等身大の姿で記録に留めることができた、
そんな世界の宝のような録音が幾種類も存在します。
その中でも、この二人のコンビのオペラ録音と肩を並べるのは、
フルトヴェングラーの「トリスタンとイゾルデ」「ワルキューレ」
「ドン・ジョヴァンニ」、
エーリヒ・クライバーの「フィガロの結婚」、
ギョルグ・ショルティのワーグナー「ニーベルンゲンの指輪」連作、
これぐらいではないか、そう思えるほどです。

カラスと肩を並べて歌うディ・ステファノの音楽性を考えますと、
レンズではアストロ・ベルリンのパンタッカー50㎜F2.3がそうだ!
私はそう気づきました。
けっして出しゃばらず、おっとりと落ち着いている、
でも、そのソフトな雰囲気描写が路傍の物たちを限りなく輝かせる。

楽しいですね、
ディ・ステファノを聴くと、これだ、
これこそ私の聴きたい音楽だと心を震わせ、
コレルリを聴くと、わー、こんなにたぎりたつような情熱って、
どこから吹き上げてくるんだろう、と、うっとりしてしまいます。

スピードパンクロ50㎜F2とパンタッカー50㎜F2.3も、まったく同じ。
私にそれぞれに最上、極上の描写をプレゼントしてくれる、
比較を絶した存在なんだ、そんな確信に近頃たどり着いています。

今回は、スピードパンクロ50㎜F2片手に孫の家に向かう途中、
我が家から直近のバス停までの約200mの収穫をごらん頂きます。
こんな凄いレンズを持ちながら、
なんでこんなゴミ箱みたいな道ばたで、
裏ぶれた写真ばっかり撮っているの?
もっとフォトジェニックな写真こそふさわしいレンズなのに?
そう疑問に思う向きもあるでしょう。

それは、いつもお断りしているように、写真的観点からの疑問。
私には完全に的外れのクエッションです。
写真を趣味にしたら、写真作品を撮らなきゃ、という常識なんか、
20年前にはっきりゴミ箱にポイッと捨てちゃいました。
私は、自分の人生の記録を作っているだけ。
どんなところでも、私の心を動かしてくれるなにかに出会える、
それが私の人生を生きるに値してくれる、私はそう信じています。

スピードパンクロ50㎜F2もそんな私を理解してくれています。
彼は「こんなところで、なんで僕が?」なんて決して言いません。
彼は彼なりに最善を尽くしてくれている、私はそう信じます。
写真家なら、同じ場所でももっときらきら輝く写真を撮るでしょう。
私は私の心に映ったままに撮りたい。
私は華麗なパフォーマンスなんか大嫌いな人間です。
1人ひっそりと人生を楽しみたいだけ。
そんな私にスピードパンクロがプレゼントしてくれたのがこれら。
感謝しています。

蛇足ですが、私はレンズにも性別があると考えています。
スピードパンクロ50㎜F2は男性、
パンタッカー50㎜F2.3とスピードパンクロ35㎜F2は女性、
私はそう確信しています。

じゃ、ホロゴンはどうなの?
失礼、ホロゴンに性別はありません。

    ホロゴンは神です!




b0226423_1675447.jpg
b0226423_1674895.jpg
b0226423_1674140.jpg
b0226423_1673675.jpg
b0226423_1673141.jpg
b0226423_1672511.jpg
b0226423_167193.jpg
b0226423_1671475.jpg
b0226423_167985.jpg
b0226423_167338.jpg
b0226423_1665885.jpg
b0226423_1665268.jpg
b0226423_1664565.jpg

by Sha-Sindbad | 2016-08-20 16:18 | SpeedPanchro50/2 | Comments(0)